システムトレードの考え方が学べる入門書の最高傑作
レビューを検索してここに辿り着いた方は幸運です。 結論からお伝えすると、迷わずに買うべきです。 トレードルールとは何なのか、検証の重要性、そしてルールを守り抜くマインドをこの本は教えてくれます。 今比較検討しているオカルトチックなインチキトレード本と違い、この先トレードを続けても退場したとしても多くの示唆に富んだ学びを与えてくれる最高の一冊となっています。ちなみに私は実用と保存用と観賞用で3冊購入しました。
どのレベルのトレーダーにお勧めできるか
正直、駆け出しのトレーダーにはおすすめしません。手元に置いておくのはいいでしょうが、理解できるようになるにはテクニカル寄りの十分な知識と初歩的な統計学の知識を身に付けていることが前提になるでしょう。その上で、実際にトレードを行ってみて教科書通りにいかない。パンローリング社の高額な本読み漁っているのに何故結果がついてこないのかと行き詰っている人にお勧めします。随分と具体なシチュエーションです。実際に私も駆け出しトレーダーだった頃に読みましたが、少々内容が難しく感じました。それに自分のトレーダーとしての才能を信じていましたので、B・N・Fさんのように個人トレーダーは自分の直感と経験を信じてこそだというよく分からない拘りをもっていました。そのためシステムトレードを推奨する本書の内容にある種の拒否反応が出てしまいました。この本はトレーダーが最初にぶつかる壁を越えるために読むべきです。怪しいトレーダー系YouTuberの話は無視して、まずはこれを読むことをお勧めします。
伝説のトレーダー集団 タートルズ
タートルズはリチャード・デニスとウィリアム・エックハートのふたりの間で行われた、 優れたトレーダーを教育によって作り出すことができるかという賭けから始まった80年代の伝説のトレーダー集団です。本書はそのタートル一期生であるカーティス・フェイスさんの著作で、海外のトレード本にありがちな、伝記形式トレードで重要なポイントを伝えていくようなスタイルとなっています。リチャード・デニスたちがタートル達に与えたルールは拍子抜けするほどシンプル(初心者向けの本に載っているレベルです)でしたが、厳密なルール作りとマインドセットはこの先もずっと通用するものであると確信しています。
ただし、この本に書かれた手法をそのまま採用しても現在ではもはや収益を上げることはできないでしょう。少なくとも昨今のFX市場では検証済みです。私は実際に2019年からの2年間FXにおける4時間足でテストしてみましたが、ほぼ損益分岐点の水準のままです。昨今の数日間続くような中規模以上のトレンドが現れにくくなった相場では、ますますパフォーマンスが落ちるのではないでしょうか。感覚としては初期のロスカ位置が当時の幅よりも広くとる必要が出てきているように思います。本書にあるATRによる正規化戦術を取り入れるのであれば、許容リスクを大きく見積もるか、1unit当たりポジションを軽くすれば簡単に改善できるとは思います。(ますますトレード資金は必要になりますが。。。 )
(※4時間足でトレードをしたのは、2年間という短い期間でテストサンプル数をできるだけ多く確保し、かつできるだけ日中足に散見されるのノイジーな値動きの影響を受けなくするためです。ATRでロスカットのマネージメントが行われるため、このように判断しました。 お問い合わせいただければ、取引データはすべて差し上げます。)
シンガポールで亀を育てるように、私たちはトレーダーを育てよう
デニスが短い訓練期間でタートル達に伝えたのは以下のルールです。
【エントリールール】 ・システム1:20日ブレイクアウト ・システム2:55日ブレイクアウト 上記の条件が整った場合に1Unitのポジションでエントリー
【Unitの追加】 ・1/2ATR(20)順方向に価格が動くごとに1Unit追加 (相関の強い市場では最大4Unitまで)市場間の相関強度に伴う最大Unitなど細かいルールもありますが、Unit追加についてはまずはこれだけ覚えておけば問題ないと思います。
【エグジットルール】 ・2ATRの逆行 ・システム1については10期間の最高値(or安値)への逆行 ・システム2については20期間の最高値(or安値)への逆行
【1Unitの考え方】 1Unit={取引口座の1%/(2ATR*lot数)
以上のような実にシンプルなルールです。 複雑なテクニカル指標は何も含まれていませんが、これら全てががまとまったときに非常に多くの変数を有するトレーディングルールと成っています。 その上、過去データを使用した検証をするときに極めて客観性の高いものばかり用いられています。エリオット波動など自己裁量によるアウトプットが必要となる分析を否定するわけではありませんが、個人的にはあまりに主観に依存しすぎてしまうためシステム(またはシステマチックな)トレードに組み込むには不向きであると考えています。 シンプルかつ明瞭な指標の組み合わせ。これは検証フェーズでは非常に重要な意味を持ってきます。今これを読んでくださっている方はご自身の手法のすべてを数式で表すことはできますか?タートル流を現代版に昇華するにあたっては、アイデアの数式可は必須事項であるとお考え下さい。
リスクは友達だ。恐れてはいけない。理解し、制御し、ともに踊れ。
利益の還元はゲームの一環であるという言葉と並び、個人的にこの本最高の名言であると思っています。トレードには必ずリスクが付きまといます。勝率100%のシステムなどありえません。しかしながらリスクを受け入れなければそれに対するリワードなど得られません。特に私のような弱小個人が取れるレベルでのトレンドフォローシステムでは損益曲線は長期的に利益が見込めたとしてもガッタガタになります。普通は使い続けることができないでしょう。そんなシステムを信じて使い続けるためには、検証を重ねることにより得た自分の作り上げたシステムに対する理解、そして長期にわたる連敗に終わってしまった場合でも破産しないレベルでのリスクマネージメント。これらが必ず必要となります。
【ご提案①】完全に自動化されたシステムを採用すべきか これについては、ラリー・ウィリアムスさんが自身の書籍で実に興味深いことをおっしゃっています。システマチックなトレーダーではあるが、高速道路をトラックが逆走してきたような状況ではシステムを無視して裁量で実行するというものです。 明らかに逆行要因となり得るような状況であれば、最初に定めた損切設定を無視して脱兎のごとくポジションを放り投げて逃げ出すべきです。つまり、ある程度(とはいっても過剰介入はよくないと思いますが)裁量による判断が取れる余地を残してはどうでしょうか。 カーティス・フェイスさんの主張とは異なりますが、私はこのように考えています。
【ご提案②】どういったスタイルの手法を採用すべきか ここでは、カウンタートレードとトレンドフォローの2つに絞って意見を述べさせていただきますが、結論としては自分の性格にあった手法であれば何でも良いのではないかと思っています。 私は損失が出てもなんとも思いませんし、勝率が低くともある程度の期間で考えた場合に収益がプラスになっていれば良しとしますし、利が乗ってきた場合にもすぐに決済せずにずっとポジションを持ち続けることができるタイプの人間です。こういったタイプの方はトレンドフォローを採用してはどうでしょうか。反対に、勝率が低いと不安でしょうがない、細かく損切を設定してポジションを大きく取りたい方、利益目標は明確に設定したい方などはカウンタートレードが向いていると考えています。 本書を参考に、ご自身にあったスタイルのシステムを作り上げればよいのです。 ただし、どちらかを採用するというのは十分な資金を用意することが難しいフェーズでのお話です。投資対象、時間軸、手法などあらゆることは将来的には分散されるべきです。 投資対象の分散をした方が良いというのは頻繁に耳にするかと思います。なぜか。シャープレシオが改善するからです。(パフォーマンスの尺度は多くありますが、ここでは便宜的にメジャーな指標で記述します)つまり、メリットはガッタガタの損益曲線が改善するということにあります。アイデアが浮かんだ際にはメモを残しておいて、毛嫌いはせずにどちらのスタイルも受け入れる準備をしておいた方がよいでしょう。それにどちらのスタイルであっても間違いなく収益を上げることは可能です。どっちが良い、ダメということはなく、どういったパフォーマンスになるのかを十分に理解をしたうえで、一貫性を持って取り組み続けることが大切です。
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